世界遺産とは

 世界遺産は、世界遺産条約(正式には『世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約』)に基づき、世界遺産リストに登録された「顕著な普遍的価値」を有する文化遺産や自然遺産のこと。決定機関は世界遺産委員会(事務局はユネスコ世界遺産センター)である。

 世界遺産条約は、「顕著な普遍的価値を有する有形の文化遺産や自然遺産を人類共通の遺産としてとらえ、国際的に保護・保全し、未来に伝えていくこと」を目的に、ユネスコ(国連教育科学文化機関)総会で1972年に採択、1975年に発効された。日本は1992年に世界遺産条約を批准し、125番目の締約国となった。

なぜ今、世界遺産か? 世界遺産の意義

 世界遺産に登録されることは、遺産の内容が、他に類例がない固有のものであり、国際的に「顕著で普遍的な価値」があると認められたことになる。その国の、関連地域の人々の誇りとなる文化、自然遺産を内外にアピールできるということは、単に観光振興にとどまらない意義を有することになる。登録された遺産を持つ国は、それを恒久的に保存していく義務を課せられることになる。そのことは、住民にとって、ふるさとの文化、自然遺産を見直し、保存管理のあり方を総点検する機会となる意味をも持っている。

世界遺産の種類

 文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類があり、世界遺産リストの中で、保護・保全や未来に伝えていくことが特に危機的状況にある物件が「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登録される。

 このうち「城下町金沢」「霊峰白山」が目指しているのは文化遺産である。

文化遺産
顕著な普遍的価値を有する記念工作物、建造物群、遺跡、文化的景観
■ 代表的物件
  • ・法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)
  • ・古都京都の文化財(京都府、滋賀県)
  • ・白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県、富山県)など
自然遺産
鑑賞上、学術上、保存上、顕著な普遍的価値を有する地形や生物、景色などを含む地域
■ 代表的物件
  • ・白神山地(青森県、秋田県)
  • ・屋久島(鹿児島県)
  • ・知床(北海道)など
複合遺産
文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産
■ 代表的物件
  • ・ウルル=カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア)
  • ・マチュ・ピチュの歴史保護区(ペルー)
  • ・泰山(中国)など
危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)
世界遺産リストの中で、保護・保全や未来に伝えていくことが特に危機的状況にある物件
■ 代表的物件
・ガランバ国立公園(コンゴ民主共和国)
自然遺産として1980年に登録。密猟によるキタシロサイの激減のため1996年に危機遺産リストに登録
・バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群(アフガニスタン)
タリバンによる石像爆破密猟によるキタシロサイの激減のため2003年に文化遺産・危機遺産リストに登録
・オデーサ歴史地区(ウクライナ)
ロシアによる軍事侵攻2023年に文化遺産・危機遺産リストに登録

世界遺産登録(世界遺産リスト掲載)への道筋

  • STEP 1暫定リストから世界遺産委員会に推薦
    世界遺産条約締約国の政府が、国内の世界遺産暫定一覧表(暫定リスト)記載の候補の中から、条件のそろった物件を、締約国21カ国で構成された世界遺産委員会(政府間委員会)に推薦する。
  • STEP 2専門機関が評価調査を実施
    世界遺産委員会の依頼で、文化遺産候補はICOMOS(国際記念物遺跡会議)、自然遺産候補はIUCN(国際自然保護連合)が専門的な評価調査を行う。
  • STEP 3世界遺産登録の可否を決定
    ICOMOS、IUCNの評価調査報告を受け、毎年1回開かれる世界遺産委員会が、世界遺産登録の可否を決定する。

 世界遺産として登録されるには、「顕著な普遍的価値」を持っていることが必要で、その「ものさし」になっているのが「評価基準」(登録価値基準)である。世界遺産委員会の定める「世界遺産条約履行のための作業指針」に、以下の10種類の評価基準が規定されており、世界遺産になるにはいずれか1つ以上にあてはまる必要がある。

【顕著な普遍的価値】の評価基準(文化庁ホームページより)

  • 人間の創造的才能を表す傑作である。
  • 建築、化学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流またはある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  • 現存するか消滅しているにかかわらず、ある文化的伝統または文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも稀有な存在)である。
  • 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
  • あるひとつの文化(又は複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態もしくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本ある。または、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。(特に付加逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
  • 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
  • 最上級の自然現象、または、たぐいまれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
  • 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的または自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
  • 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程または生物学的過程を代表する顕著な見本である。
  • 学術上または保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅の恐れのある種の生息地など、生物多様性の生息域保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。